BLUEROSE

  
ビタミンC スイギン 自堕落 愛の形
脳内分泌  夜の自転車 Virus 気にも止めずに。 今はもう昔の話 テッちゃん 屋久島

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:+:ビタミンC:+:

最近タバコの量が増えた。

だから前にも増してグレープジュースを飲むようにした。

なんとなくビタミンCが多い気がするから。

でも、本当は、グレープフルーツにビタミンCが多いかどうかなんか知らない。

単純に味が好きなのかも。

 

今は一粒飲んだら一日分のビタミンCを1/3ぐらい補給出来てしまう

サプリメントとかあるらしいんだけど

なんとなくサプリとかはキラい。

ザラザラ飲んでるヤツが同僚にいるけど見ていて吐き気、そして嫌悪感。

 

カンカン照りの真夏日の下、

弁当食べ終わって、タバコ吸いながらグレープジュース。

同僚は何人かいるけれど、みんなはタバコを吸わないから食堂。

タバコを吸わない、って合わせるほど話が弾むわけでもないし

結構一人が好きなのかも知れないと思いながらグレープジュース。

 

毎朝同じファミマで80円のグレープジュース。

朝は少し贅沢に、量の少ないピンクグレープジュース。

お昼には同じエムピーで100円のグレープジュース。

500mlのをごくごく飲みたいから、いつものサンキスト。

 

そか、タバコってビタミンCをうばうんだよね。

ビタミンCが足りないとすぐにイライラするんだよね。

でも、イライラしたときにタバコ吸ったりするよね。

別にグレープジュース飲んだって落ち着かないよね。

コーヒーのほうがむしろ一息つけるかも知れないね。

 

そんなこと考えながら

毎日毎日グレープジュース。

取ってるつもりのビタミンC。

本当に取れてるのかわかんないビタミンC。

でも、取れてるにしても取れてないにしてもカラダは文句を言わない。

だから毎日、ちゃんと100%のグレープジュース、ビタミンC。

そして、タバコ。

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:+:スイギン:+:

スイギンは、いつも月を眺めながら飲んでる。

今日も変わらず、庭先の小さな木のベンチの上で足を投げ出して

月を眺めながら飲んでた。

僕は彼が飲んでいないところは見たことがない。

だって昼間でも彼の手から小さなグラスが離れることはなかったし、

余りにも暑い日や寒い日には彼は姿を見せなかった。

きっと家の中で飲んでいたんだろう。

夜は月を眺めながら飲んでいるのが常で、

昼間は何か重たげな書物を横に開いて、が常だった。

 

彼の頭髪は

見るものが驚いてしまうような見事な銀髪で、

近所に住んでいる女性達の羨望の的であり、

肌は白く透き通り、ほくろの一つも見当たらず、

瞳ですら、薄い薄い、銀色に近い色をしていた。

尚且つ彼は端麗にして眉目秀麗であったから

食べるものには困っていないらしい、と父に聞いた。

なにしろあいつは話をさせてもうまいんだ、と父自身スイギンへの差し入れを持ち、

僕も時々その後ろに付いて行った。

 

その日は満月が皆を照らす、綺麗な夜だった。

ひとしきり父を話をしたスイギンは、僕へ、「いーいものを聞かせてやるよ、ボウズ」と言い、

ぐびり、とグラスの中の月を飲みほすと、歌いだした。

その声は、なんともいえず綺麗で、

その声を聞きたいがために近くに集まってきた街の人達の心と

初めて聞いた僕の心を魅了した。

男のような、女のような、どちらとも取れる天使のような声。

きっと飲み干した月が彼の中で光っているのだろう、と子供の僕にさえ思えた。

水銀のような銀髪が月を反射して輝き、彼自身として輝く。

風邪に乗って流れる歌声すら、銀色に光っているように思えた。

 

ある日、僕はスイギンと飲みながら話した。

15になる頃にはもう飲めたし、スイギンと話すのが好きだったし、

彼も僕にいろんなことを教えてくれた。

もう物心がついたころから歌えたこと、それは誰に教わったものでもないこと、

今まで働いたことがないこと、けれど書物を読むのが好きなこと。

それらの知識は、少し酔った僕の頭を刺激するには十分な材料だった。

ふと、僕は聞いた。

「スイギンって、どんな字を書くの?」

スイギンは微笑んだ。

「俺はな、ボウズ、水銀の髪と目を与えられて生まれたんだ。

 神様がスイギンって名をつけてくれたのさ。

 そして、俺にその神様が与えた仕事が、スイギンってんだ」

「スイギン?」

「ああ、酔吟って書くのさ。酔って気持ちよく歌を歌うことさ」

 

なるほど、天職だと思う。

神様が、飲みすぎたときにスイギンは作られたのかもしれない、と。

 

それから何年か経って、スイギンは死んだ。

なんだか大きな大学病院からエラいセンセイ達が来て、

スイギンのからだを運んで行った。

後で聞いたところに寄ると、スイギンは世にも珍しい、

人間のアルビノということだった。

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:+:自堕落:+:

猫になりたい。

と、横で君が言う。

猫になって、一緒に暮らせたらね。

とあたしは言葉を返す。

 

衣食住が保障されていて

きままにお出かけして

ときどきじゃれついて

そんな暮らしが出来ればと思うほど

最近は疲弊しているみたい。

 

朝からお酒を飲んで

煙草を吸い

お菓子をつまみ

テレビを眺め

ネットサーフィンをして

昼寝する。

そんな休日も

必要なんだと

実感した。

 

堕落していく感覚を

楽しんで、楽しんで、楽しんで。

ゆっくりと死んで行くよな感覚を

楽しんで、楽しんで、楽しんで。

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:+:愛の形:+:

人の欲望というものに付き動かされて

僕は毎晩君を抱く。

愛の形と言うのは人には見えないもので

でも僕の愛の形と言うのは

僕の分身が天を仰ぐ形になるということで

君はそれを理解してくれていて

僕を受け入れるために

泉を満たす。

 

僕はもう

一人でいた頃のあの闇に戻りたくなくて

君といるのかもしれないけれど

それも色々合わさって

君と一緒にいるのだと

勝手にそう思っている。

 

心地よい温もりの泉に

どっぷりと浸かりながら

君の姿と目を閉じている顔を眺めて

僕は昂ぶり

白い涙を流し

君を抱き寄せて眠る。

 

それが僕の愛の形だ。

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:+:脳内分泌:+:

その夜は忙しかった。

30席しかないあたしのバイト先は全席予約済みで

目が回るほど忙しくて、

その店にいるバイトの中では1番手のアタシには

いろんな仕事が沢山回ってきて、

あっちからもこっちからも

これ、出来ましたー、とか

これ、どーすんスかー、とか

そんな風に呼ばれて駆けずり回った。




やっと少し暇になって、

他のバイトの子に、賄いを作らせるための指示を出してから、

アタシが煙草に火をつけて休憩していると、

すっごいテンション高いですねぇ〜

なんていうもんだから、

そうだよ。今、脳の中でコビトさんがイッパイ働いてるんだよ。

っつたら笑われた。

そのコビトさんは、蛍光灯の中にもいて、

蛍光灯が光っているのもコビトさんの働きのおかげで、

雪が溶けていくのもコビトさんのおかげで、

電子レンジで物が加熱出来るのもコビトさんのおかげなんだよおおお。

そんな話をしながら煙草を吸い終わって、

さ、頑張ろう

とまた仕事に戻った。

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:+:夜の自転車:+:

毎日、夕方自転車で通った道を

毎晩自転車で通って帰る。

煙草をぷかぷか吸いながら、きこきこと走る。




小さな交差点では、

いつも信号無視をする。

信号無視をするときはいつも見えない車にはねられるような気になる。

僕の中の小さな罪悪感がそれをもたらしているのだろうか。




いろんな事を考えながら、

20分の道のりをきこきこと走る。

大きな交差点に差し掛かった時、ジッポのオイルが切れた。

くそ、切れた。むかつく。

それでも咥えてしまった煙草のために、ジャッ、ジャッ、と石を削っていると、

はい、どうぞ

と知らないオネエサンが火を貸してくれた。

あ、どうも

ってありがたく火をつけてもらって、

いつもこの時間なんですか

ええそうなんですよ、いつもこの時間なんですよ

最近警察多いですねぇ、自転車停められませんでした?

僕なんて何回も停められましたよ、不審ですかねぇ

なんて世間話をして、サヨウナラをした。




最近の夜は蒸し暑くて

僕の伸ばしっぱなしの髪はくくりっぱなしで

くくった髪の中が汗で湿っぽくて少し気持ち悪いけれども

早く家に帰って涼しいクーラーの部屋で

煙草を吸って冷たいウーロン茶を飲もう

といつも思いながら、きこきこと走る。

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:+:Virus:+:

なんだか巷ではなんちゃらウィルスってのが流行っているらしい。

テレビでも職場でつけっぱなしのラジオでもそのニュースで持ちきりだ。

でも、日本で平和に仕事をしていて

海外に出かけるなんてこととは縁のない僕には関係のない話で

僕はいつものように帰宅して、

いつものように

ただいまケンタ。

ってケンタに話しかけた。

ケンタっていうのは僕の飼い猫で

ちょうど拾ってきたときに僕がケンタッキーを食べていたから

ケンタって名前にした。

珍しいオスの三毛猫で、今年で5歳になる。

そしたら、ケンタが

おぅ、待ってたゼ。早くメシよこせよ。

なんて言うもんだから俺はびっくりした。

その上、

なんだよ、またドライフードかよ。たまには缶詰くわせろヨ。

なんていうもんだから、ビックリを通り越して笑ってしまった。

とりあえずいつものように洋服を着替え、ソファーに座り、

膝の上にいつものように乗ってきたケンタに

何で話せるようになったのか聞いてみると、

俺は何時も話してんだゼ。お前が理解してねーだけだろ。

なんて言われてしまった。




僕は、なんていうのかな、

いつも話かけてるばかりだったケンタが僕に答えてくれるのが嬉しくって、

一晩かけてケンタと一杯話をした。

ケンタは、実はすごいやつで、

頭の中ではいつも相対性リロンとか難しいことを考えているんだけれども、

人間みたいに表現する術を持たないから考えているだけだとか、

お前あのコとはどうなってんだよとか

そんな話をしてた。

次の日もその次の日も、僕は仕事を休んで、

ずっとケンタと話していた。

ずっと僕は一人きりで生活をしていて、

ケンタがいるだけでも和んでいたのに、

彼が話してくれると言うのがものすごく嬉しかったんだ。




大体ヨ、俺はケンタなんて名前安直でいやなんだゼ。

だってお前、その時は抗議しなかっただろ?

いや、抗議したって!お前が理解しなかっただけだっつーの!

俺には猫語わかんねーもん。

はぁ、人間はコレだから。俺なんて、人間語、理解してるのにサ。




次の日、目が覚めると、

僕は病院のベッドの上にいた。

なんでも、風邪をこじらせて熱を出して倒れたらしい。

ケンタが心配になって、その日のうちに無理やり退院して、

いつもよりちょっと高い缶詰を買って、部屋に戻ると

ケンタが

にゃあーん

と鳴いた。

僕には

よぅ、おかえり

と聞こえた。

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:+:気にも止めずに:+:

文章をつらつらと書きながら

煙草をぷかりぷかりと吸って

大好きな酒を胃に流し込んでいく。

私は誰かのようにクリエイティブな事が出来なくて

思ったことをそのまま書くしか出来ないから

もっとくりえいてぃぶなノウリョクが欲しいと何時も思っている。

自分では人に比べると沢山の闇を抱えているような気がしていたんだけれど、

ある人に言わせれば私の闇なんて小さな小さなモノらしいし、

そして、私は毒を吐けないんだとそう言う。

これでも毒を撒き散らして生きているような気がするんだけれど、

まぁ、ここらへンはその人とは感じ方が違うんだろうけれど、

どうなんでしょう。

よくわからなくなってきました。




例えば、

ただの幸せでは満足出来なくて

誰にも手に入らないようなそういう幸せが欲しいと願った結果

死んだ先も一緒にあるいて欲しいと約束をせがんでみたり

殺して欲しいとお願いしてみたりするわけです。

相手を殺したいと本気で思って首に手をかけて

自分の鼓動がどんどん早くなってなんだか吐息が漏れて

次の瞬間には首を絞められて悦んでいるような

そういう人間だったりするわけです。

昔の小さな殺人の記憶も

年が経つごとに少しずつ薄れていて

毎年のように露のうっとおしさとあいまって見ていた悪夢も

今年は見なくなったりするような事態が起こるわけで、

でも、今は頭が痛くて仕事を休んでいて

煙草が美味しいわけです、ウマー。

どうも夏風邪っぽいのだけれども、煙草を辞める気にはならないし、

頭が痛くても酒を流し込もうと言うような気になるんです。

なんだかもう駄目な人間ですね、はっはっは。

なんて笑いながらそんな自分が好きだったりするわけです。

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:+今はもう昔の話::+:

あの子と最初に出会ったのは

阪神淡路大震災の年で、

僕は会社員になって2年目だったと思う。

やっと仕事と家とのルーティンにも慣れてきたところに

悪友から貰った一枚の2ショットダイヤルカードで僕は時間を潰そうと思い、

彼女と電話が繋がった。

彼女と僕の年の差はちょうど10歳で、

そのとき彼女は、16歳だったんだけれども、

僕と話しているうちに会うことになった。

僕はそう言うコトをしたことはなかったんだけれども、

見知らぬ人と初めて会うって言うのに不思議と怖い気持ちはなく

なんとなく昔から知ってる友達に会いに行くような感覚で彼女の指定した場所まで行った。




彼女が指定して来た場所にはマンションが立っていて

その頃はまだ携帯電話がそんなに普及してなくて、

僕は自分の携帯から彼女のポケットベルにコールをいれた。

そしたら、目の前のマンションからフツウの女の子が出てきて、

こんにちわ、はじめまして。

なんて笑いながら言った。

そのまま彼女の部屋に行って電話の話の続きをして、

こたつにはいってテレビを眺めながらなんてことない世間話をして、

僕達は自然にキスをした。




その後何度も彼女とは会って、

俗に言う男と女の関係にもなって、

そして僕は転勤した。

転勤先で僕は出来ちゃった結婚をすることになり、

そして、元いた土地に戻ってきた。

久しぶりに彼女と会って食事をしてお酒を飲んで

好きだった作家の話をして今の仕事の話をして

政治の話をしてちょっと艶っぽい話をして

子供の話をしておくさんの話をして

最近結婚生活がうまく行ってない話をして

彼氏の話を聞いて今までの事を聞いて

そして僕達はまた抱き合って眠った。

あれから6年立った彼女のカラダは

とっくにオトナになっていて

僕と時々一緒にいた頃とはぜんぜん違うギコウも身に付けていて

イイオンナになったなぁ、と僕は感心した。

彼女は僕の腕の中で

あの頃大好きだったのに

と泣いた。

僕は無責任じゃないから責任は取って奥さんも子供も大事にしていくけれど

そして愛して行くつもりだけれども

彼女のことは一生忘れられないだろうな、と思いながら

送って行く途中の交差点でキスをした。

彼女は悲しそうに微笑んで、

それじゃ。

とタクシーに乗り込んだ。

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:+:テッちゃん:+:

僕はミングルと言う形式の家に住んでいたことがあった。

ミングルていうのは、

まぁ、部屋が二つに別れていて

でも、トイレとか風呂とか台所とかが共同で使うような

まぁ使いやすい同居って感じの形体のアパートのことなんだけど、

そのとき僕はまだ専門学生で17歳で、

一緒に住んでいたのは25歳のテッちゃんだった。

一緒に住んでたからと言って別に知り合いだったわけでもなんでもなく、

ぶっちゃけ同居し始めてから知り合いになったって言うのが正しいんだけど、

僕とテッちゃんはよく気が合った。

それは単純に年上だったテッちゃんが僕に合わせてくれていたのか

本当に気が合っていたのかは分からないけれども

大きな都市に出て来たばかりの高校を中退した僕には嬉しくて

休みの日は毎日彼と遊んだりすることが多かった。

テッちゃんは、なんか家族とあまり連絡を取らないって言っていて、

どこかの長男で、責任が重いのがイヤだってよく言ってた。

僕も長男だから、なんとなく分かる気がして、

その話は一度だけしか聞かなかった。




ある日曜日にテッちゃんと昼飯の約束をしていたもんだから

彼の部屋の扉をノックした。

テッちゃん、メシ、そろそろいこーや。

返事がなかったけれど、テレビが付いているのが聞こえて、

僕はテッちゃんが部屋にいるときはいつもテレビをつけているのを知ってたから

勝手に部屋に入った。

テッちゃんはいつも鍵を締めること何てしなかったし、

彼女もいないって言っていたし、

多分昼までぐっすり寝ちゃったんだろうと思った。

そしたら、テッちゃんは首を吊っていた。

カーテンレールにタンスをかませて補強して、

ぎりぎり足が浮いていた。

足元には多分死ぬときに垂れ流した、いろんな体液が流れていて、

僕は一瞬何がなんだか分からなかった。

やっと理解して、

警察に電話して、

警察が来て、

テッちゃんは運ばれて行って、

管理人が来て、

その人の家族が来て、

僕はお悔やみ申し上げた。




次の日、

僕は一番仲の良かったカナコに電話をした。

あのさぁ、俺ミングルに住んでただろ?そしたらさぁ、隣の人が自殺しちゃってさぁ。

ええええ!?そうなん!?

そうなんだよー。俺が第一発見者。




カナコは次の日曜日に会いに来てくれた。

そのときには、テッちゃんが行っちゃってから4日立っていて、

荷物も全部家族が引き取りに来た後で、

僕は自分の部屋で寝ないでテッちゃんの部屋を使って寝てた。

そのことをカナコに言うと、

あんたねぇ、ちょっとオカシイわよ、ふふふふ

なんて笑われた。

僕もつられて一緒に笑った。

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:+:屋久島:+:

こんな私にも親友と呼べる人間が居て、

まぁ、それは、他人から言わせれば

親友とは言えないらしいが、

それでも自分では親友だと思ってる人がいて、

その人はとても遠くに住んでるんだけれど

時々は電話とかそんなのをするわけで

メールとかもしたりするんだけれども

最近はなんだか連絡をあまりしなかったので

久しぶりにメールしてみたら宛先不明で戻ってきた。

仕方がないなぁ、なんて電話してみたら

携帯電話も繋がらなくって

なんだか無性に彼のことが気になって

家に連絡をしてみたらお母さんが出て、

彼が死んだと聞かされた。




私達はとてもとても仲がよくて、

何年も前からの古い古い付き合いだった。

惚れたはれたの感情はまったくなく、

いや、まったくなかったといえば嘘になるかもしれないけれども

お互いにそれを確認したことはなく、

それはさておき私達二人は

とても近くてとても遠い性格をしていたんだけれども

文章を書いたりするところで共通していて

好きな音楽とかもリンクしているところがあって

彼の部屋に行っても別に男と女として過ごすわけではなく

彼の弾くギターに合わせて一緒に歌ったり

彼が友達と行った肝試しのビデオをみてげらげら笑ったり

一緒に行きつけのお店に行ってつけで飲んだり

昼間っから勝手にそのお店に入って勝手にお金を置いて飲んだり

そんな二人だった。

私の昔の経歴とかは彼が全部知っていて

そして私も彼の経歴とかは全部知っていて

隠し事とかは何もなくて

いつも笑って遊んでいた。




私は彼が闇の部分を抱えていることは知っていたけれども、

それは私も同じように抱えていたことだから

深くは追求しなかったし、彼も追求はしてこなかった。




彼は自殺したそうだ。

ある日、部屋の中で首を吊って。

屋久島の田舎の家だから梁とかまだあるような家で

畳が敷いてあったのを覚えている。

趣味でやってた物書きの元となった哲学書を収めるための大きな本棚、

数年前に自殺したと言う友人の使っていた高価なギター、

そして、文章の山。




彼の肌の感触は覚えて居ない。

そんなのは覚えているわけはなく、

二人ともひどく酔っ払ったときに手をつないで仲良く歩いたぐらいだから

そんな感触なんて覚えているわけがなく。

覚えているのは彼が語っていた小難しい哲学の話と

早くに死んだ親父さんが残した仕事の話。

後の話は、いつも酔っ払ってぐだぐだと話していたから

ほとんど覚えて居ない。





いくら距離が離れていたからとはいえ

自殺を決めたときに連絡が欲しかったと思った。

止めるなんて野暮なことはしないのに。




今となっては全てが終わった後だから

私には何も出来ない。

ただ、わかるのは、

もう彼の、少し酔って笑った顔を見れないと言うことと、

もう彼のギターに合わせて歌うことが出来無いと言うこと。

それだけは分かるけれども、

どうにも我慢がならない気がするし、

どうでもいいような気がする。

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